プール雨

幽霊について

高畑版『赤毛のアン』第 42 章「新しい学園生活」

 『赤毛のアン』第 42 章「新しい学園生活」を拝見しました。原作の第 34 章「クィーン学院の女子学生」後半部分。
 ついにアンの下宿生活が始まりました。アンとマシューが馬車で行くその道々では麦の刈り入れが始まっていて、「ああ、麦、ああいう風に刈って、ああいう風に干すんだ」と思いました。アンが出て行ってしまった悲しみを紛らすため仕事に精を出すマリラの姿を見ても、隅から隅までここでの生活を知り尽くしている人たちが描いているんだという安心感があります。
 アンのいない初めての夜、マリラがマシューにつくった夕食は、今までのものと少し違っているように見えました。マシューは疲れているだろうからお腹に優しいものをというマリラの心遣いでしょうか。そのマリラの泣き声が夜、グリーン・ゲイブルズに響くのは、ほんとに寂しかったです。マシューは心ここにあらずという感じだし、二人が心配です。この話には出てこないレイチェルの存在を強く感じる瞬間です。
 印象的だったのは、アンが「街に着いたらアイスクリームを食べましょうよ」とマシューに言い、マシューも「アイスクリームは久しぶりだのう」と応えて馬車を駆る場面で、二人の前に広がっていたまっすぐな一本道です。この章の最後にアンはエイヴリー奨学金の話を聞いて、大学に行って学位を取るという大望を得ます。彼女はアボンリーを恋しく思ったり、ジョーシー・パイの意地悪に腹を立てたりはしますが、それでも今彼女の前に開けている道はまっすぐです。さみしいけれど、このまっすぐな道をアンは歩いてみるのだなあと思いました。