プール雨

幽霊について

『アンという名の少女』

 『アンという名の少女』「運命は自分で決める」前後編を拝見しました。

 原作よりもずっと不安定な感じのする世界観。

 原作のアン・シャーリーがおしゃべりなのは、話しているうちに楽しくなっちゃうし、夢が広がるから。このドラマのアンが話し続けるのは現実に追いつかれそうでこわいから。原作では村の、通りからは見えないところに引っ込んで暮らしている変わり者の兄妹が、これまた変わった女の子をひきとって、アボンリーは大騒ぎ〜という感じなのですが、このドラマには恐怖や不安があります。必死に維持してきたこの村の秩序が、よそ者によってこわされるかもしれない。アンはアンで、過去に追いつかれないようにこの現実を生き抜いていかないといけない。とてもはらはら、ふらふらする世界。
 去年、BBC版のクリスティー・ドラマを見たときにも感じたのですが、私たちは世界に対する安心感みたいなものをもう、すっかり失ってしまったのだなあと、こうしたドラマを見ると否応なしに自覚させられます。
 主人公はマリラ。話を動かすのはマリラだから。この、おそらくは、さして選択肢を与えられてこなかった、そして選択肢を選ぶよりは拒んできたであろう、慎ましく、かたくなな女性が、アンとともに曲がりくねった道を行く。そういう話になっていくのかな〜? とまず第一話ではぼんやり。