音楽映画ベストテンを組んでみました。
- バレエ・カンパニー(2003年、ロバート・アルトマン監督)
- インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013年、ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン監督)
- 愛と哀しみのボレロ(1981年、クロード・ルルーシュ監督)
- あの頃ペニー・レインと(2000年、キャメロン・クロウ監督)
- マイケル・ジャクソン This Is IT(マイケル・ジャクソン&ケニー・オルテガ監督)
- ムーラン・ルージュ(2001年、バズ・ラーマン監督)
- ナポレオン・ダイナマイト(2004年、ジャレッド・ヘス監督)
- ファントム・オブ・パラダイス(1974年、ブライアン・デ・パルマ監督)
- アマデウス(1984年、ミロス・フォアマン監督)
- 悪魔を憐れむ歌(1998年、グレゴリー・ホブリット監督)
組めた。なかなか強そうな顔ぶれが揃いました。ほかに「ナッシュビル」「今宵、フィッツジェラルド劇場で」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」「アバウト・ア・ボーイ」「ジャージー・ボーイズ」なども候補にあがっていました。何か忘れているような気もするけど、まあ、いいでしょう。こんな感じです。
あるバレエ団の日常を描いたバックステージもので、原案は主演のネーブ・キャンベル。主演といっても、基本的に群像劇。昔のバレエ漫画やダーレン・アロノフスキーの「ブラック・スワン」にあったようなライバル同士の蹴落とし合い、追い込まれて正気を保てなくなる人物、怪我で終わるダンサー人生といったものは出てこない。描かれるのは協力し合って公演を迎える、仕事として踊っている人々の姿で、それがとても創造的でおもしろい。ダンスものなので怪我の場面はあるけれども、それはあくまでも「あっては困るが、いつでも起こりうる事故」という扱いで、いつかは治るし、怪我をした人物も次の場面では笑っている。地味かもしれないけれど、登場人物の誰にフォーカスしても映画が一本撮れるだろうと思える。とても好きなダンス映画。
ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで暮らすフォークシンガーたちを追った映画で、主人公は一緒に歌ってきたパートナーを自殺で失って、心身ともに疲弊している。そんなときに、猫、女友達の妊娠、チャンス、しかし……といった厄介事が次から次へとやってくる。そんな最悪の数日を、ルーウィンは歩きまわり、歌い、喧嘩し、また歌いながら暮らすのでした。
ある夜、パリでジョルジュ・ドンの「ボレロ」が上演されている。この「ボレロ」にその夜たどりついた人々の物語で、話は1930年代、ボリショイ・バレエ団から始まる。
戦争があり、戦争が終わっても人々の暮らしと気持ちはなかなか落ち着かず、そして20年が経ち……というスケールで、上映時間も 3 時間を超えるし、決してそれがあっという間という感じではなく、長さと重みを感じる。戦争で子どもを手放した女性が何度も何度もその場を訪れて子どもを探すも、手がかりすら見つからない。彼女はヴァイオリニストなのだが、戦争でその道を断ち、戦後は小さな楽団の一員としてアコーディオンを弾き続けた。結婚式やちょっとしたパーティーでアコーディオンを弾いて日々の糧を得、休日には自分が収容所に運ばれた線路の上を歩き、手放した子どもの影を追う。そんな彼女の時間が再び動き出すのは……といった人々の人生は絡んだり絡まなかったりしつつじっくりと描かれ、「ボレロ」に通じる。
「あの頃ペニー・レインと」は、15歳という若さで人気バンドのツアーに帯同して記事を書くことになった少年が主人公で、彼と音楽によって繋がれてしまった甘苦い世界が舞台。当事者になる前で、何もできない彼だからこそ踏み出せる一歩があるということを信じさせてくれる。
「マイケル・ジャクソン This Is IT」はストイックにライブを創り上げていくマイケルとスタッフ、キャストたちを追ったもので、他の天才(と呼ばれた人を主人公とする)映画同様、創造的な人間の苛立ちや苦闘、孤独を映しながら、どんどん主人公がごくごくまっとうで、普通の人間に見えてくるのが魅力。とは言ってもマイケルだから、どうしようもなく素晴らしい。
映画の「ムーラン・ルージュ」には有無を言わせないパワーがあって、何がなんだかわからない。ニコール・キッドマン演じるサティーンが幕の隙間からクリスティンを初めて見る場面が印象的だし、舞台袖でいちゃいちゃする二人が印象的。恋人たちを見るのは楽しいと思わせる。これは画期的。
「ナポレオン・ダイナマイト」のようなクライマックスを迎える映画はたくさんあるし、どれも好きだけれど、やっぱりこれが好き。
「ファントム・オブ・パラダイス」は子どものときにテレビで見たのが最初だと思う。どの場面も私にはめずらしくくっきりと記憶に残ってる。大人になってから見ると、紛れもなく子どもの世界だということがわかって、おもしろい。
「アマデウス」は言わずもがな、全部おもしろい。見飽きない。
「悪魔を憐れむ歌」で流れるのはローリング・ストーンズの「Time Is on My Side」。悪魔が歌ってる。人々の間を悪魔がするりするりと渡り歩いて、その度にこの曲が人々の口から登って、主人公を追い詰めるのでした。主人公は非常に高潔な人物として描かれていて、そこが退屈なはずなのに、飽きるどころかすごくはらはらする。「嫌なやつと思ってたのに最後は好きになってた」という映画はたくさんあって、大好きだけど、こういう高潔な主人公に感情移入させてくれるのも映画ならではだなあと思って。