プール雨

幽霊について

コーヒー映像千本ノック 番外編

水曜日に『刑事コロンボ』を見て、

 

木曜日に『ダーティハリー』を見て、

 

土曜日に『名探偵ポワロ』を見ます。

#65 オリエント急行の殺人

#65 オリエント急行の殺人

  • デビット・スーシェ
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合間合間に『エレメンタリー』を見て、

夜はアンソニーホロヴィッツ若竹七海を読んでいます。

錆びた滑車 (文春文庫)

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メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

 

こんな生活が数週間続いておりまして、それなりに幸せを感じます。

今週の『刑事コロンボ』は第四話「指輪の爪あと(Death Lends a Hand)」でした。

探偵が依頼者の妻の秘密を手にしたところから過ちが始まります。それで妻は脅されるのですが、彼女はわりときっぱりした性格で、脅しに乗らなかったのです。それでもみ合いに……。と、ここまでが冒頭。

印象的なのは被害者の夫とコロンボの初対面シーンです。浜辺で発見された遺体を確認にきた夫は「妻だ」と認めますが、常に地位や名誉ととともにある彼はその場で泣き崩れたり、怒り狂ったりといったことができません。静かに静かに目の前の遺体を見て、背中を向けて、コロンボに犯人を早くつかまえてくれ、そのためには協力をおしまないからと言います。コロンボ自動販売機でコーヒーを買って夫に渡し、聴取は今でなくてもいいんです、日をあらためます、と申し出ますが、紙コップを受け取った夫はその紙コップを見つめながら、早い聴取を望みます。

この、紙コップを手にして、中をちらと見、口の方に持って行きかけてはやめ、そして話すという夫の仕草は静かではありますがとても痛ましいものです。特にコロンボが形式的な聴取を手短に済ませ、辞去しようとしたその背中に向かって「コーヒーを、ありがとう」と礼を言ったあと、コーヒーを口元に持って行くまでの長い間は痛々しいほどです。ともに暮らして、そしてこれからもともに生きていくことを疑いもしなかった妻の遺体を見たばかりなのです。コーヒーを飲んで、一区切りつけて、そして立ち上がって色々しなければならないことがある。その恐ろしい時間との対峙までの、とりようのない構えを支えるのが、紙コップ一杯のコーヒーだけなのです。

一方、探偵がすすめる、陶器のきれいなカップに注がれたコーヒーを、コロンボは「結構」と受け取りません。コロンボという人は朝はコーヒーを飲まないと頭が動かないというほどのコーヒー好きなのに。

捜査手法に関してはこの四話まで基本的にずっと「搦め手から」という感じで、多少、裁判の行く末が心配です。

でも、コロンボと人びとの間を行き来するコーヒーやマッチなどを見ているだけで十分、楽しいドラマです。

捜査手法が強引すぎて裁判で負けるといえば、『ダーティハリー』。今週放送されたハリーは『ダーティハリー4("Sudden Impact)』。1983 年。

髪に白いものがふえても若いときとまったく変わらず、「悪い奴には一発ぶっぱなす」というスタンスのハリーが、あるダイナーでコーヒーをテイクアウトします。外に出て一口飲んでぶほーとなって、そのまずさに驚き、思わず店の方を振り返ると、まだ日中だというのに開店札がひっくり返されていくところでした。ぴんと来たハリーは裏手に回り……。という、コーヒー的名シーンがあります。コーヒーのまずさでぴんと来て強盗にぶっ放したハリー。ハリーは直感と速度と、シンプルな正義感の人です。彼が体現しているのが「よい男らしさ」。そして犯罪者たちが体現するのが「悪い男らしさ」です。よい男らしさと悪い男らしさの戦いで「4」まで来たハリー。さて、来週の「5」ではどうなっているでしょう。「男らしさ」自体をハリーは問題にできるのでしょうか。

そして、明日のポアロは「24羽の黒つぐみ」。コーヒー的名場面はあるでしょうか。

と、このようにミステリばかり延々摂取しているのは、平素から好きだということもありますが、やっぱり片付かない日々の中で「片付けたい欲」みたいなものが高まっているのだろうと思います。ぱたぱたとパズルのピースがうまっていって、とりあえず事件が片付くところを見たい。今、バッドエンディングで片付かないやつは読みたくないし見たくないです。このタイミングでポアロコロンボ、ハリーが放送されてほんとに助かっております。