プール雨

幽霊について

鞄の中身

 西向きの部屋で寝ていると、この時期の朝はまっくらです。でも月が早朝、西の空にある時はそれを支えに起き上がることができます。

きれいよ〜

 月を楽しみにしつつ、年明けやった作業といえば、うさぎジャケットの CD を集めてみたものの、おもいのほか少なかったことと

猫を足しました

早速積んでいることでしょうか。

シモーヌ、負けないで!

 上の写真にはありませんが、去年出た『エトセトラ』のアイドル特集号をゆっくり読んでいます。特集のタイトルが「アイドル、労働、リップ」と、たいへんにかっこよく、単に表紙を眺めているだけでも満足しそうになるほどです。

エトセトラ VOL.8

エトセトラ VOL.8

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 ジュディス・バトラーのインタビューもあって、とても読み応えがあります。

 おすすめです!

 今朝は菅野つかさ「少女時代を通して出会った世界」を読んでいました。地方の貧困家庭で育ち、選択肢がなく、大学進学も諦めていた筆者が少女時代に出会い、わくわくし、憧れ、そして受験勉強をがんばり留学の夢も叶えた。そして考える。自分を外に連れ出してくれたのは「多くの階層に開かれた大衆文化」であったこと、その大衆文化に導かれてたどり着いたのは教育と福祉の問題だったこと、その視点と知識がアイドルと労働の問題には欠けていることなど。

 特に次の記述が印象に残りました。

 私は自分の生い立ちから経済的、文化的に豊かなバッググラウンドを持たなかったが、Kpop のように間口に広いものに救われてきた。でも、そんなに遠回りをせずとも、文化資本や良質な教育にありつける人は山ほどいることを、大人になってから知った。

 そういった人たちの中には「アイドルのファンって人権侵害に加担するようなものでは」「なぜファンでいられるのだろう」と思う人も多くいるだろう。

 私も地方の荒々しい環境で育って、アイドルを入り口として勉強し、読み、考え、書いてきたので経緯に共感できます。

 「遠回りをせずとも、文化資本や良質な教育にありつける人」たちの中にいて、自分はもう間に合わないな、何をやっても遅いなとうちのめされていたこともあります。

 だから、映画秘宝ライターが自分たちのことを告発されても、自分たちが何をしたか、しているかということがかれらには意識できないだろうということも何となくわかります。潤沢な文化資本と人脈をもつ人たちと、そうではない、(秘宝ライターから見れば)ふつうの、一人の人が相対したとき、そこにある差にかれらはおそらく気付いていない。個人の告発を攻撃と言い換えてしまうようなことをやっているとき、自分たちサブカルエリートは顔の見える範囲に仲間がいて、これからもその支え合いの中で励まし合ってやっていくのでしょうけど、告発者はそうではない。

 人はその知識を得ていくときそれなりに苦労も努力もするので、そこを「恵まれている」と指摘されて腑に落ちない気分になるのは想像できる。自分にできることをやってきた上での出版活動について「特権」と言われたら、えっ、そうなの? と戸惑うだろうと思う。いわんや、あらゆる人がその情報を、その知識を得られる環境にいたわけではないなどと諭されようものなら、それを攻撃のように感じることも想像できないことはない。

 こういった格差は可視化するのも問題化するのもすごく難しい。

 みんな、手荷物の中身はちがうので。

 十代、二十代ならいざ知らず、三十代、四十代ともなれば、誰でも小さな手荷物くらいは持っている。その手荷物を大事に、自分が何を手にしているかを意識した上で学んだり働いたりするのが大事、ということなんだろう。

 言い換えると、誰でも何かについては知らず知らず専門性を身につけていて、意外とそのことを意識していない。自分の手荷物についてはわりと「ないこと」にして語ってしまっている。「よく知らないけど」「わからないけど」と素人のようなそぶりで語っていると、それが問題を厄介にすることもある。

 その大切な手荷物をひとつひとつひもといて、個々に語られる事実が積み重なっていくこと、そういう文脈や歴史が尊重される世界が開かれること、そこに希望がある。

 と、菅野つかさの短いエッセイは語りかけてくれました。


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📚おしまい📚