ケネス・ブラナー版『ハロウィーン・パーティー』こと、『ベネチアの亡霊』を見ました。
原作の『ハロウィーン・パーティー』はすごく凝った、読者を楽しませようという野心に満ちあふれた話で、いろんな要素があって私はポアロもののなかでも好きな一作です。ポアロとマダム・オリヴァは目の前で起こった事件と関連があると見られる、過去の事件も同時に探らなければならず、その捜査方法にまわりが半信半疑でいるなか、じわじわと、じわじわと真相に近づいていくのでした。
あれを、映画にするんだ、楽しみ! でもどうやって? と思っていたら、全然違う話で、見た後では原作が思い出せないほどです。そして、そうかこれが「ケネス・ブラナーのポアロ」なんだなと納得しました。
孤独で誇り高いポアロ。
でも孤独で誇り高いのはポアロだけではなく、みんなそうなんです。
ブラナー版ポアロでは、ポアロだけでなくみんながよそ者で旅人なのです。だれも、友だちなんていない、そういうハードな世界です。
舞台は水の都ベネチア。元は孤児院だったという古いお屋敷。そのなかを駆け回る小さな子どもたちと亡霊。そこに霊媒師。見応えのあるシーンが続きました。
十分楽しんだと思いますし、ケネス・ブラナーのことは敬愛していますけど、私には私のポアロがいるなあと思って、いったん映画館をあとにしました。しかし、「なんか、もう一本見ないと収まりがつかないな」という自分の勢いに気づき、急遽『コンフィデンシャル 国際共助捜査』を見ることにしました。
見始めたら原題のうしろに「2」ってあって、あ、これ、続編なのか! とそこで事実を知りました。でも、前作のことは大変自然なかたちで出てきて、まるでずっと前からの知り合いであるかのような体で見ることができました。15 分過ぎくらいから、完全に「親戚の話」くらいの距離感が生じます。第一作では、北朝鮮民主主義人民共和国(以下、「共和国」)の特殊捜査員リム・チョルリョンと、大韓民国(以下、「韓国」)の刑事、カン・ジテはかつて偽札犯の追跡で共闘して、たいへんなことになったそうです。そちらの方は現在、アマプラで見られるようです。
この二人が今度は広域麻薬組織の摘発のために再タッグを組み、そこに FBI から派遣されたジャックも加わり、共和国×韓国×アメリカの捜査陣の、それぞれに違う意向をしょって、互いに何かを隠しながらの共闘が成立し、映画は後半、さらにさらにたいへんなことになりました。
とにかく、観客を楽しませるぞ、決して飽きさせず、失望させず、うきうきの状態で帰路につかせるぞという気概に満ち満ちた映画で、緊張と弛緩のバランスもちょうどよく、笑ったりはらはらしたりどきどきしたり、大忙しでした。
少女時代のイム・ユナがカン・ジテの義妹で、コミカル風味を醸しつつ、いざというときは潜入捜査で活躍したり跳び蹴りで活躍したり、『エクストリーム・ジョブ』のあの人も出ていたり、ミーハー心も大満足でした。
人間が生身で空をためらいなく飛んでいました〜!
そんなわけでお昼ごはんに韓国料理を食べて、
道端で雨に打たれる黄色い花を愛でたり、
この先が楽しみなかぼちゃをあらゆる角度から確認したり、
白いヒガンバナを眺めたりしつつ、
城にもどりました。せっかくだから新訳で『ハロウィーン・パーティ』読んで『コンフィデンシャル』の第一作も見ようと心に決めつつ、今夜は眠ります。ではでは。
🎥 ちぇりおですわ 🎦
追記:『ハロウィーン・パーティ』読んで、『コンフィデンシャル:共助』見ました。『コンフィデンシャル:共助』はおもしろかったけど、ユナが途中でいなくなるのでおかざりっぽくなってしまって、それが残念でした。新作では大活躍で、あらためて満足しました。