プール雨

幽霊について

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を見ました ⑴

 『ジョン・ウィック』の新作を見たので、「すてきだな」と思ったことについて書こうと思いつつ、マリリン・マンソンの "Killing Stranger" を聞いていたらどんどん時間が過ぎていきます。『ジョン・ウィック』の第一作で流れていました。

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 ジョン・ウィックの舞台は殺し屋集団の世界なので、一般市民は巻き込まれません。多少、クラブで楽しく遊んでいたらそこで銃撃戦が始まり、といったことはあるけれど、まあ大丈夫。そもそも第一作で、殺し屋集団となんの関係もない一般の犬ちゃんに手を出すからこういうことになったわけで、基本的にあそこで行われているのは、一般市民の世界とは全然違う理屈と道理をもった世界内でのいざこざです。一回口にしたらそれは実行されなければならないし、自分で行ったことの報いは必ずうけなければならない。それが、「言わされたこと」「やらされたこと」だとしても。言葉と行動で人生が決まる世界です。

 地下をすべる王、バワリー(ローレンス・フィッシュバーン)の宣言により物語は始まります。バワリーは「ここからここまで」と明確に始めと終わりを示し、舞台の範囲を決めます。

 バワリーはすこし、他の人と違う水準の言葉を話していて、彼が腕を上げ宣言すると、そこはまるで舞台のようです。

 ジョンはこの地下の王を頼り、彼の指さす方向に向かって覚悟を決めます。

 そんな風にして始まるこの物語の背景に "Killing Strangers" が響いているというのは興味深いことだと思いました。

 俺たちは知りもしない相手を殺す

 知りもしない相手を殺す

 知りもしない相手を殺す

 逃げられるものなら逃げてくれ

 逃げてくれ

 逃げてくれ

 「この世界に物語は必要ない。あるのは仕事だけ」と幕が上がる"Killing Strangers"。

 「殺せ」とか「死ね」という命令に抵抗しきれない、そこから逃げ切れない私たちが、「この世界では、歌も物語も夢も必要とされていない」という歌を聴きながら、地下のキングに誘われて、悲しそうなジョン・ウィックの物語を見る。そういう営みについてじっくり味わっているところです。

 本題にたどり着けないまま、今日はおしまい。 

キンモクセイが香る今日この頃です

🎥 つづく 🎦