プール雨

幽霊について

『淋しいのはアンタだけじゃない 』と『FAKE』

映画『FAKE』で佐村河内守さんを見たとき、この人は何らかの意味で聞こえていないんだろうなと思いました。相手の言っていることが全部は聞こえていないようだし、コミュニケーションに重大な問題が生じているのにそのこと自体に気づかないまま長い期間が経っているようだし、何よりも、よい医者に出会えていない感じがしました。特に、どうということのない質問や、訂正していけばそれで済むような誤解でぱっとコミュニケーションを断ってしまうところを見ると、「わかってもらえない」「誤解されている」ということがすっかり考え方の前提となって身についてしまっているんだなと思いました。
『FAKE』はそのこと自体がテーマではなかったので、なんとなくしか見えなかったのですが、『淋しいのはアンタだけじゃない 』ではまさにそのことが粘り強く描かれていて、三巻でぴしっと終わるんですが、不思議な時間感覚を生じさせていました。苦痛を理解してもらえないということから始まる孤独が、考え方や話し方、それらを含めた生活全体にかける負荷の大きさについて描かれていて、これは万人におすすめだなと思いました。