プール雨

幽霊について

喫茶店のコーヒー

 「よくかき混ぜて」
 と店主は言った。
 それぞれにコーヒーをスプーンでかき混ぜて、僕たちはコーヒーを飲んだ。コーヒーはインスタントだった。よくかき混ぜて、という店主の言葉の意味は、これはインスタントです、ということだった。ひと口飲めばインスタントだとわかったが、こういうこともあるのだと僕はそれを全面的に受けとめ、それ以上はなにも思わなかった。


 片岡義男『珈琲が呼ぶ』より。1996 年前後、東京のどこかでの話だそうです。竹下景子さんが学生時代にアルバイトした喫茶店だとか。

 この状況とはまた違うのですが、学生時代、たまに行った喫茶店では、店主の方が「ストップって言ってくださいね〜」と言いながらコーヒーにミルクを注いでくださるのがどきどきしました。