プール雨

幽霊について

6 月は元気が出なかった

蟄居を要請されていましたので、それはそれはおとなしくしていた 6 月です。

どれくらいおとなしくしていたかと言うと、骨格筋率がやばいところまで落ちるほどです。

このまま行くと、直立歩行に支障が出るのでは……? と、不安になりました。

蟄居から解放されて一週間くらいで元に戻りました。

それはそれで、自分で自分にびっくりです。

でも、映画館などにはまだ行けていないのです。最寄りの映画館は繁華街の真ん中で、感染の報告もあるので様子見しています。6 月は引き続き、アマプラやテレビを利用して見ていました。

自分のメモ帳を読み返すと、そろそろ蟄居疲れが見えます。うわごとのような書き込みが多く、後で読み返すと意味不明な文言ばかりです。

私はわりと自身の生活習慣にこまめにチェックを入れて、反省して、計画して、実行したりできなかったり、といったことをやる方なのですが、それをオフィシャルに強制されると意地でも聞きたくないという気分になるものだなあという発見がありました。

もちろん、手や顔くらい洗いますし、会いたい人にも会っていません。東北の親戚に「今は来ないでくれ」と言われたので法事にも行きませんでした。だからひとつひとつ聞いていけば「まあね」くらいの気持ちで聞けるのかもしれませんが、「行動変容」だとか「新しい生活様式」だとか、そんな指示をオフィシャルに出されることの、この、情けなさと気持ち悪さで気持ちが沈んでいました。公的機関と私たち市民って、そういう、指導したりされたり、(行動を変えずに感染した場合は自己責任だぞと)脅したり脅されたりする関係なんでしたっけ。

大塚英志2020 年 6 月 20 日の朝日新聞朝刊で、インタビューに答えてこう言っていました。

僕にはコロナ下の光景は、その(戦時下の)「新生活体制」の繰り返しに見えました。ホームセンターの家庭菜園コーナーが人気になり、東京都が断捨離の動画を配信する。政治やメディアは、日常のつくり替えによる行動の変容を説く。その姿に違和感を抱きました。自ら生活領域の統制に参加し、従うことに慣れてしまった社会の向かう先が気になります。

生活という個人の領域に、不用意に公権力が介入してくることを「おかしい」と思うのは民主主義の基本です。

「新しい生活様式」宣言や「夜の街」への注意喚起は「市民が生活を変えればこの問題は解決する」とでも言いたげです。でも相手は新しい感染症です。病気と押し引きしながらどたばたとやっていく以外にないのではないでしょうか。それを、健全な生活をしている人はかからない、かかる人に問題があるという方向に言論を構成していく政府やメディアに嫌悪感をおぼえる 6 月でした。

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天気のよい日が待ち遠しいです

🍀 6月メモ 🍀

6月に見た映画
  • 『毒戦 DRAG WAR』(アマプラ)(再)……小さな画面で見てもおもしろい!
  • 『樹大招風』(DVD)……日本盤が出ていないため、中国語音声と英語字幕で。字幕を読むのに精一杯でもおもしろい!
  • 『ラッキー』アップリンク)……アップリンクの三カ月見放題チケットで。酒も煙草もやるおじいさん、名前はラッキー。10 歳の子の誕生日に「君の腕に帰りたい〜」とスペイン語で歌って拍手喝采。ハワードんちのリクガメ、ルーズベルトはおでかけ中。
  • 墨攻BS日テレ)……前半の、城を守る専門家、墨家による守城作戦の鮮やかさに比べ、後半の城主たちによるけちくさい動きのけちくささがすごかった。ラストの子ども達と、見ている私の気持ちが完全に重なってしまう。まじめな映画でした。
  • 『女王蜂』BSプレミアム)……よくわからなかった。
  • 病院坂の首縊りの家BSプレミアム)……金田一映画を、初めてばっちり楽しんだかもしれない。今、もう一回最初から見たら『女王蜂』もおもしろいのかも。桜田淳子の重みと、石坂浩二草刈正雄コンビの軽みとの対比がよかった。
  • デンジャラス・ビューティー(午後ロー)……前半は悲しく、恐ろしく、きついけど、徐々に主人公のまわりに仲間が増えていって、友情を結べる相手もいて、そうして迎えたラストは意外にもさわやかですてきだったし、ラストはみんなきれいだった。
  • 『MONSTERZ』(アマプラ)……邦吉映子さんはほんとに邦画を愛しているのだなあと思った。
  • 『超能力者』(アマプラ)……これは完璧なアイドル映画。
6月に見た『名探偵ポアロ』(BSプレミアム
  • 」……夢のくだりはよくわかんなかったけど、ヘイスティングスが活躍したのでよかった。
  • エンドハウスの怪事件」……ミス・レモン、霊媒役など大活躍で満足。
  • ベールをかけた女」……珍品回。中年男二人が「泥棒に……入っちゃう?」「入っちゃう!」とうきうきして忍び込んで片っ方だけしょっぴかれてびっくりした。
  • 消えた廃坑」……これもちょっと珍品寄りかなあ。
6月に見た『刑事コロンボ』(BSプレミアム
  • 黒のエチュード」……犯人がいいところなしだし、犯行も雑だったのでただ単に被害者や犯人の家族が気の毒だった。
  • 悪の温室」……犯人の甥っ子があほすぎて気の毒すぎてとにかくひたすら哀れだった。
  • アリバイのダイヤル」……この辺り、現オーナーが先代の息子で、後見役が……みたいな定番の話が続きます。
  • ロンドンの傘」……珍品回。コロンボ、風邪ひいてる。声がらがら。
6月に読んだ本
  • アガサ・クリスティー『予告殺人』羽田詩津子訳……新訳で。マープルの捜査は話の裏側で進行していて、表では村の人たちがあれこれ推理をめぐらせる。戦後もの。ジェーン・マープルは変化に対してしなやか。

  • 『The History of the English Langage』(Oxford Bookworms Library)……シェークスピアが登場して、印刷機が出来て、英語の辞書を作ろうという機運が高まって、「広く、みんなに伝わる英語」が出来ていって、そして今また新たな方言のようなものがばらばらと生まれつつあるというのが短い間に読めておもしろかった。
  • 宮台真司、永田夏来、かがりはるき『音楽が聴けなくなる日』……久々に、宮台真司の口の悪さにびっくりしました。でもそこをこらえて読んで、漠然とした話で恐縮ですが、一部の政治家が自身のことを法より上の存在として捉えている、その彼らの理路を、実感として捉えることができたのは収穫でした。
  • D. C. A. ヒルマン『麻薬の文化史 女神の贈り物』森夏樹訳……現行のどんな刑法よりも歴史の長い、麻薬の文化史。卓球は「そんなに気になるんだったら一度やってみればいい。はまらなければいいわけで」というようなことを昔言っていたけど、今になって、一理あるなあと思いました。麻薬を「外から来るもの」と捉えているうちは足下をすくわれ続けるのかも。
  • 佐藤哲彦、清野栄一吉永嘉明『麻薬とは何か 「禁断の果実」五千年史』……このなかの、覚せい剤に関するレポートだけでもひろく読まれてほしい。
  • 高野秀行、清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代……専門の違う二人できゃっきゃと話して、一瞬すごく大きなところに話が行き着きそうになって、それがまぼろしのようにふっと消えて、またたどり着きそうになって、そして遠のいて、を繰り返す。楽しい本です。