このところ、雨続きだったので、この世がしっとりしていました。
今日は晴れたのでさっぱりとしています。
お散歩のあとは読書です。
あっ、言い忘れましたが、今日はぽーちゃんが書いています。
ぽーちゃん、ぽーの一族を探しています。
エドガー・アラン・ポーはぽーの一族です。ぽーちゃん、エドガー・アラン・ポー、読みます。したがって、江戸川乱歩も読みます。こないだ『江戸川乱歩全短篇 Ⅰ』(ちくま文庫)を読んでいたら、こんな箇所があって、ぽーちゃん、じっくり味わいました。
この日、橘は、これが彼の好みらしいのだが、制服の上にインバネスという変な恰好で、車室の隅に深々と身を沈め、絶えずポーのレーヴンか何かを口誦んでいた。(江戸川乱歩「火縄銃」『江戸川乱歩全短篇 Ⅰ』p.156 より)
江戸川乱歩の小説のなかにエドガー・アラン・ポーが出てきました。つまり、ぽーのなかにぽーが出てきてそれをぽーが読んでいたので、ぽーちゃんはその事態をじっくりお口のなかでころがしたのです。
ぽーちゃんはこの "The Raven" を福永武彦訳「鴉」で読みました。おねむになってきたなと思ったら、コツコツとノックの音が聞こえて、でもだれもいなくて、とにかくだれもいなくて、えいやっと鎧戸を開けたらそこにいたのが鴉で、でも鴉は質問に答えてくれないんです。
ぽーちゃん、悲しいと思いました。とても冷え冷えとした気持ちになりました。
それで、江戸川乱歩の方にもどったら、こんな箇所が出てきました。
ずば抜けた犯罪者には、その相手役として、優れた探偵が必要なのです。 (江戸川乱歩「石榴」『江戸川乱歩全短篇 Ⅰ』p.539)
ぽーちゃん、その通りだと思いました。
雨子の好きな映画で『サブウェイ123 激突』というのがあって、ぽーちゃんたちはこれを何度も見ています。ある日地下鉄がハイジャックされるのですが、そのときたまたま車両の指令室にいたのがガーバーで、犯人はたまたまそこにいたガーバーを交渉役に指定し、ガーバー以外はダメだって言うんです。それで刑事さんは、ガーバーもぐるなんじゃないかって疑うんですけど、そうじゃないんです。犯人にとっては、ガーバーと語り合うことがそれくらい大事で、ガーバーの声がなければ自分が迷子のようになってしまうのです。
こないだ読んだ M. W. クレイヴン『ストーンサークルの殺人』でもそんなことが起こってました。
そこには、すべての部位の傷がまとめられていた。無秩序につけられた切り傷をひとつにまとめた結果、犯人が意図した絵が現われていた。なにか言おうにも口があけられない。
「どういうわけだ?」ポーはかすれた声を出した。
フリンは肩をすくめた。「あなたに訊けばわかると思ってた」
ふたりは最後の写真をじっと見つめた。
イモレーション・マンは被害者の胸部にふたつの単語を刻みつけていた。
"ワシントン・ポー"と。 (M. W. クレイヴン『ストーンサークルの殺人』p.34 より)
ポー!
このワシントン・ポーさんは停職中の刑事さんです。フリンさんは停職になったポーさんのあとを継いで警部になった人です。そしてイモレーション・マンは現在ここで起こっている連続殺人の犯人につけられたあだ名です。
意味や事情はわかりませんが、この小説の冒頭で、ポーさんは犯人からご指名を受けたのです。
ぽーちゃん、どきどきしました。その意味がわかるのは、物語のずっとおしまいの方なので、ずっとどきどきしていました。
この小説はすごく残酷で悲しいところがあって、ぽーちゃんにはよく事情がつかめないところもあるのですが、ポーを中心としていろんな二人組が出てきて、そのどれもがすばらしく、ぽーちゃんは「二人っていいなあ」と思いました。
ポーが仕事のパートナーで友人のティリーにTシャツをプレゼントしたり、ランチをおごってあげたりしているところを見ると、ぽーちゃんもだれかにプレゼントしたくなりました。
物語のまんなかへんくらいで犯人がぽーちゃんにもわかったのですが、それでつまらなくなるわけじゃなくて、よりいっそうそこからはらはらして読むことになるのが、小説として姿がよいと思いました。
すっごく悲しくて辛くて、それでも友だちっていいなって思えるお話でした。
ぽーちゃんはポーが好きです。
突然ですが、おわります。
また書きたくなったら書きます。
それまでみなさん、お元気で。
読んで下さってありがとうございました。