プール雨

幽霊について

ウィルソン

診療所のウィルソン 6

とかなんとか言って、もうすっかり終わった気がしてしまっているが、センター試験は来週なのだった。 私はそわそわしていた。 元子もわりとそわそわしていた。 私たちはあまり友だちが多い方ではなかったので、そのそわそわを止める人がいなかった。 思い返…

診療所のウィルソン 5

ウィルソンへ お元気ですか。 私は今大学三年生で、毎日アルバイトと勉強に忙しく暮らしています。 というのは嘘で、来週センター試験です。 今、自分のこれからが早送りできたらなと一瞬思ってしまいました。入試は高校入試以来ですが、どちらかというと苦…

診療所のウィルソン 4

雪は嫌いじゃない。まわりの音が消えて静かになるし、雪かきや吹雪の中を歩くのは集中していないとできないので、何も考えずに済む。黙々とやれることか、集中してないとできないことを一人でするのが好きだ。 「高校生!」 と声をかけられて私はむっとした…

診療所のウィルソン 3

1 poolame.hatenablog.com 2 poolame.hatenablog.com 部活か生徒会に参加していれば推薦もできるんだけどな、と学校で一度ならず言われた。学校側からすると、「浪人できない」「国公立しか受験できない」という条件が私にはハードに見えたらしく、ついつい…

診療所のウィルソン 2

前回 poolame.hatenablog.com 近所の小学生たちから「おじいさま」と呼ばれるようになるまでの半年くらいの間、地域ではその人は「新しい先生」とか「あの先生」と呼ばれていた。新しい先生は診療所にちょくちょくやってくる人たちの持病などはすぐ把握した…

診療所のウィルソン

無人だった診療所に先生がやってきた。 前の先生はおじいちゃんだった。あだ名がおじいちゃんだった。だれかが「おじいちゃんが」と言ったら、それは診療所の先生のことだった。年齢は私にはわからなかったけど、おじいちゃんは私たちにおじいちゃんと呼ばれ…