プール雨

幽霊について

伊勢物語 第二十段

二十

 昔のことだ。

 男が大和に住んでいる女を見て、言い寄り関係をもった。

 しばらくして、男は宮仕えをする人であったので、大和に留まっているわけにもいかず、京に帰ってくることになった。そのとき、三月ごろだったのだが、楓の葉で紅色がとても風情あるのを折って、大和の女のもとに道中からこう歌って贈った。

   君がため(君のために

   た折れる枝は(折った枝は

   春ながら(春だというのに

   かくこそ秋の(こんな風に秋のように

   もみぢしにけれ(紅葉していますよ

 と、こう詠んだところ、女からの返事は男が京の家についてからやっと、使者が持って来たのだった。

   いつの間に(いつの間に

   うつろふ色の(うつろいゆく恋心が

   つきぬらむ(あなたについたのでしょう

   君が里には(あなたの里には

   春なかるらし(秋ばかりで、春がないようですね

 この男の人、大和方面に所領があるみたいなんですよね。それでたまに来て、そこで女性を見初めてついつい恋愛関係に至ってしまったんだけども宮仕えの身なのでそこに居着くわけにはいかないと。で、「ばいばい」って京都に向かって、その道すがら春なのに楓で赤くなってたのがあったので「俺の心は燃えてるぜ」みたいな、脳天気なことを言って送ったら、するっと返事がこなくて、だいぶ待ってから、「あなたって人は……ほんとに不埒で軽くて、飽きっぽくて……まあ、特にもう言いたいこともないです」って言って寄こしたという。

 男が「燃える秋」みたいに言ったのを、同じ秋でもあなたのは「飽き」でしょ、って話なんですね。

 うん。

 特にどこにもおかしな展開がないです。

 解説書を読むと、男の雅が伝わらない残念な女……的なことが書いてある場合があり、そっちの方がなんかよくわからない。

 今宵は大変につかれておりまして、色々とわからない。

 テレビでマツコの番組などを見ていると、スタッフの方達が時折どっと笑うのですが、大体「いまなんで笑った?」と思う。わかりません。

 わからないといえば、今日の「光る君へ」がよくわからなかった。というか、実はずっとわからないのですよね。時代考証がどうとか、史実がどうとか、そういう水準じゃなく、あの人たちの直截的な表現の直截さかげんがよくわからない。「言うことを聞かないと殺すよ」みたいなことを、本人に直接、まっぴるまに、まわりに人がいるところで言いますよね。全体的に。

 それであの〜〜自分はもしかして〜〜「この人たち、全体的に言葉遣いが下品」って思ってるのかな〜〜。

 そうなのかな〜〜〜。

 そうじゃないといいんだけどな〜〜〜。

 でも、単に「下品」ていう感じでもなくて……わかりません。たまに、外務省の人がびっくりするようなことをびっくりするようなタイミングでびっくりするような相手に向かって言ってますよね。「えっ! そういうこと、言っちゃうんだ、公式に!」とびっくりするやつ。あれに近いです。とにかく、このタイミングで、この人に向かって、そういうことを、そういう表現で言うんだ……! とびっくりしてるうちに毎週おわる。

 まあ、びっくりしてる。

 なんだろう。

 ついていけないかもしれない。

 「光る君へ」についていけない我が身を省みると、ずっと、なんにもわかってなかったな……という気持ちになってしまう。

 ほんとは、「伊勢物語」、あともう少しで有名な筒井筒の段なので、今週はその直前まで進めておきたかった。でも、疲れちゃった。

 大河ファンのみなさん、ごめんなさい。私のことはいいので、先に行ってください。

 といっても来週まで待たないといけないのか。

 連続ドラマは平等ですね。賢者にも愚者にも時間がくればそれはやってくる。

 なにがどうしたわけじゃないけど、おわります。