プール雨

幽霊について

伊勢物語 第二十七〜三十二段

二十七 昔のこと。 男が女のもとに一夜だけ通い、それきり行かなくなってしまった。朝になり、女が、手を洗う所にかけてあった貫簀(ぬきす)をよそへどけてみたら、たらいの水に自身の影が見えたので、女みずから 我ばかり(私ほど 物思ふ人は(思い悩んで…

伊勢物語 二十六段

二十六 昔のこと。 男が、五条の辺りにいた女と人生をともにすることができないとはっきりして、それを辛いと思っていたところに人から手紙が来た。男は返事にこう詠んだ。 思ほえず(思いがけず 袖にみなとの(袖に港ができたかのような さわぐかな(さわぎ…

休日

椅子から飛び降りようとするざべす 降りたざべす 今朝はひと仕事終えた記念に塩麹を仕込みました。 おいしくできるかな? いつもと違う麹なので味の違いが楽しみです。玉葱麹も気になるので、そのうち仕込むでしょう。 実は……そうは見えないと思いますし期待…

伊勢物語 二十五段

ちかごろうちのまわりで咲いている花。 木瓜 山茱萸 ネモフィラ! 二十五 むかしのことだ。男がいた。会うとも会わないともはっきりとは言ってくれない女がいて、さすがにそういうことをする女だけあって、男はどうしても惹かれてしまう。それでその女にこう…

伊勢物語 二十四段

図書館の前の椿……じゃなくてこれは山茶花か ららら。 図書館からのお便りを待っているの。 暇つぶしに「伊勢物語」でも読んじゃおうかしら。 二十四 むかしのことだ。 男が片田舎に住んでいた。この男が宮仕えをするためと言って、女との別れを名残惜しく思…

伊勢物語 二十三段 筒井筒

『光る君へ』の舟から下りてはや十日。日常をとりもどしつつあります。やはり、日曜の夜に連続ドラマを見ると生活のサイクルが乱れます。主人公と主人公の親が理不尽な目に遭った翌朝、ふつうの顔をして働くなんてできません。大河ドラマは今後、金曜か土曜…

伊勢物語 第二十二段

ぼんやり 今朝の月 二十二 昔のことです。 頼りなくて別れてしまった二人がいて、それでも忘れられなかったのでしょうか、女のもとから 憂きながら(しんどいと思いながら 人をばえしも(あなたのことを 忘れねば(どうしても忘れられなくて かつ恨みつつ(…

伊勢物語 第二十一段

「光る君へ」は七回を最後に、大海原へと旅立ちました。私は港にひとり。今は「ああ、すっごく不思議な光景を見た」という気持ちです。ただ夢の心地なむしける。 「伊勢物語」の方は引き続き読んでいきます。 二十一 昔のこと。 ある男女がいました。二人は…

伊勢物語 第二十段

二十 昔のことだ。 男が大和に住んでいる女を見て、言い寄り関係をもった。 しばらくして、男は宮仕えをする人であったので、大和に留まっているわけにもいかず、京に帰ってくることになった。そのとき、三月ごろだったのだが、楓の葉で紅色がとても風情ある…

伊勢物語 第十七〜十九段

「源氏物語」はどこを読んでも気が重くなるので読みたくないとか言っていたら罰が当たり、どうしても読まなければならない状況に追い込まれたのが先月のことにございます。つろうございました。「いやだっつってんでしょ」と虚空に向かって叫びましたがたれ…

1 月の言葉になりきれないあれこれ

こないだ、ふっと「具合がたいへんに悪い」と告白したら、「ほらほら、かわいいぬいぐるみを見て」「すこしあまくてあったかいものを飲んで」「猫ちゃんの背中をなでなでしたときのことを思い出して」「とりあえず寝て」とたいへんな勢いで甘やかされました…

伊勢物語 第十六段

悪霊退散! 昨日はスーパーに行きましたら太巻きがたくさん売られていて、私も「ハーフ」なるものを買い求め、食しました。そしたらば、「太巻き欲」に火がつきまして、まだまだ食べたい。今日は食べなかったので、明日は食べたい。そんなことを思う立春です…

伊勢物語 第十一〜十五段

今週の「光る君へ」は体感 20 分でした。びっくりしてたら終わったよ。なかでも藤原道隆が言った、われわれは大きな秘密を抱えたのでこれでまた家族の結束が強まりましたナ……的な文言の意味がわからなかった。共犯関係を結束と言い換えることはままあるけれ…

ケネス・ブラナーのエルキュール・ポアロ

小さな人たちのお部屋を ピントは合っていないが、貼る 模様替えしました。 多少、春らしく 今日はケネス・ブラナーの「ナイル殺人事件」を見ました。「オリエント急行殺人事件」と「ベネチアの亡霊」の間に公開された、ケネス・ブラナーによるポアロのシリ…

伊勢物語 第十段

一〜五 六(芥川) 七〜九(かきつばた) 九(宇津の山べの、時知らぬ山、都鳥) 東下りの続き。男、武蔵の国にて。 十 むかしのことだ。ある男が武蔵の国までふらふらと歩いて行った。そこで、その国に住んでいた女に言い寄った。女の父親は別の男と結婚さ…

伊勢物語 第九段(駿河なる〜都鳥)

今朝は部屋の時計兼温度計が湿度を「Lo%」と表現していました。そんな表現あるんだ、この時計、と思いつつ、白湯を飲みました。 レモンを入れました 川上弘美訳の『伊勢物語』、冒頭だけ読んだのですが、かなり切れがよくて、さすがのかっこよさ。「はやく…

伊勢物語 第七、八、九段(かきつばたまで)

「光る君へ」は第二話にして完全に異空間に飛び、いつのどこのなにかわからなくなりました。 かなり思い切っています。 道長とまひろ以外は語彙が貧弱で、たいへんあけすけな言葉遣いをされます。こんな端近で、そんな話をそんな語彙で? ということが続きま…

伊勢物語 第六段

「光る君へ」の感想を読んでみたら、結構多くの人にとって、平安時代って遠いんだなということがわかりました。「藤原が多すぎ」とか。摂関政治の時代が舞台だから、これはもう逃れようがない上に、名前も似ているので字幕を出してほしいレベルです。道隆道…

伊勢物語 第一〜五段

大河ドラマ『光る君へ』に引用されることになるであろう『源氏物語』。この機会に『源氏』を読んでみようという方もおられるかと思います。私は『源氏物語』を読むのはちょっと面倒なので、『源氏』のネタ元のひとつ、『伊勢物語』を通読してみることにしま…

和山まや『ファミレス行こ。 上』がおもしろかった

今日もみなさん、一日おつかれさまでした。 新聞の折り込みちらしを熟読するくま 名前はくまぽー ぽーちゃんて呼んでね ちょっと前、オットーがメガネをなくしました。どこでなくしたかは不明で、しかしなくしたことだけはどうしようもない事実でした。 それ…

2023 年、読書の思い出

読書が計画通りに行きません。無念です。でももう、しょうがないかなと諦めてもいます。日本語日本文学専攻のわりに読むのが遅く、せいぜい週に二冊というところなので、あまり欲張って計画倒れが重なるのも切ないです。今年は一層、快適さ重視で読書を楽し…

『カーテン』ふたたび、さらに『ピエタとトランジ』

2021 年 9 月、『名探偵ポワロ』(NHK の BS プレミアムにて放送)が最終回を迎えて千々に乱れた私の心でしたが、まもなくまた第一話から放送が始まってしまい、「あれ?」と思いつつ見続け、2023 年秋、二週目のポワロも最終回『カーテン』まで見終えました…

それは狂気ではありません『パディントン発 4 時 50 分』

アガサ・クリスティー『パディントン発 4 時 50 分』松下洋子訳を久しぶりに読みました。 honto.jp 初めて読んだときと比べて、しみじみとおもしろかったです。じっくり読んでしまいました。 汽車と汽車がすれ違うその間に、もう一方の車中で起こる殺人事件…

回復期

丸四日寝込んでいました。 まあでも感染症ではなく、昔からたまにある「なんか動けない」というやつで、久しぶりだったので、懐かしくもびっくりしました。 胃腸は全然元気で、近くで駅弁祭りが催されたときは紐をひっぱるとほかほかになるタイプのお弁当を…

ぼろぼろになったので、三木那由他『言葉の風景、哲学のレンズ』を読みました

親戚や友人たちに子が生まれ、やあやあとその新しく生まれてきた人に会いに行くと、その人たちは必ず、生まれた瞬間から固有の人格をたたえているのでした。そして意外なほどに親たちとは似ていなくて、「もう、この人にはこの人の性格と人格があって、この…

ホテル暮らし

今週はホテル暮らしをしていました。私にはめずらしい経験でしたので、記録を残しておきたいと思います。 11 月 7 日(火) 朝 9 時過ぎの東北新幹線に乗り、まずは盛岡を目指しました。前の席の方が「ちょっとシートを倒します」とおっしゃって、それからシ…

健康によい読書

久しぶりの体調不良でした。 二十年くらい前、同じような状態になったことがあって、そのときは軽い吐き気とめまいが続いて、ちょこちょこ立っていられなくなる感じだったのですけど、病院では結局よくわからなかったのです。軽い胃炎があって、それを治した…

電車でそばにいた人が私の読んでいた本のタイトルにびっくりした 2023

丸山正樹『夫よ、死んでくれないか』を読みました。 夫よ、死んでくれないか 作者:丸山正樹 双葉社 Amazon 出かける直前に読んでいたらクライマックスに突入してしまい、気になるので電車で続きを読みました。一応、カバーは外して、中身だけもって。カバー…

鹿紙路『玻璃の草原(くさはら)』を読みました

土地勘がある! 玻璃の草原 作者:鹿紙路 Amazon 小説を読んでいて、たまに「あ、これはあそこだな」と土地勘がはたらく場面に出くわすことがあります。読んでいるときに明確に映像を想像するわけではないし、文字から想像する経験と映像などから想像する経験…

ケネス・ブラナー『名探偵ポワロ ベネチアの亡霊』を見ました

ポアロが巻き込まれる『ハロウィーン・パーティ』は、ある人物の「なぜ、わたしは計画をしてはいけないんでしょう? なぜ、わたしは喜んでいけないんでしょう?」という言葉が印象に残りました。楽しんだり、喜んだりするととたんに頭を抑えつけられる、マー…